オンラインジャーナル
アキレス腱断裂とは|症状と予防 復帰までに時間がかかるやっかいなケガ
アキレス腱断裂とは|症状と予防 復帰までに時間がかかるやっかいなケガ
アキレス腱断裂は、バレーボールやテニスなどのスポーツ活動中に発生しやすいケガの一つです。最近では40~50代のスポーツ愛好者の間で増加しています。アキレス腱断裂は、スポーツ関連の外傷の中で深刻なものとみなされ、完全な回復や競技に復帰するのに約6ヶ月から1年の時間がかかることが多いようです。
アキレス腱断裂とは
下腿三頭筋とアキレス腱
アキレス腱は、腓腹筋とヒラメ筋が下方であつまって形成され、かかと部分に繋がっています。これらの筋肉は、アキレス腱を通じてかかとを持ち上げ、つま先を下向きに動かし(底屈)します。つま先立ちやダッシュ、ジャンプの際の力を地面に伝える役割を、この強固な腓腹筋、ヒラメ筋、そしてアキレス腱が担っています。
アキレス腱断裂とは
アキレス腱断裂は、人間の体内で最も大きく強靭なアキレス腱が断裂することを指します。特にスポーツを行っている30歳から50歳の間でよく見られるケガです。オーバーユースや、加齢に伴う腱の変性が主な原因として考えられます。一般的に30歳頃から腱の老化が始まり、腱の柔軟性が次第に失われていきます。体重の増加や無理な姿勢、筋力の低下なども、腱へのストレスやケガのリスクを増やす要因となります。
ケガの原因のうち、スポーツが約90%を占めており、残りの10%は60歳以上の方の転倒や事故などです。スポーツにおいては、テニス(特にレシーブ時)が最も多く、次いでバドミントン(レシーブ時)、そしてバレーボールまでで50%を占めています。また、最近ではサッカーやフットサルにおけるケガも増えている傾向にあります。
尚、どのようなレベルの選手にも、急に動き出す際にアキレス腱を傷つけるリスクが存在します。トップのアスリートでさえ、ケガをすることがあり、それは過去の疲労や体調の変動といった複数の要因が複雑に影響していることが多いようです。
アキレス腱断裂の症状
アキレス腱が切れたら歩ける?
アキレス腱が断裂する際、蹴られたような強烈な衝撃を感じたり、パチンという断裂の音を感知することがあります。
また往々にして、本人は何が起こったのか理解できず、自分で立とうとするものの、腱が完全に切れているとバランスを取れずに転倒してしまいます。
断裂部分は凹み(陥凹) 、つま先立ちが困難になります。うつ伏せになり、膝を直角に曲げた状態でふくらはぎを強く握るThompsonテストでは、正常な場合、足関節が底屈(屈曲)するのですが、アキレス腱が断裂している場合はこの動きが見られません。
なお、受傷した直後は歩行が難しいものの、時間が経つとベタ足での移動ができるようになることも少なくありません。
治療とリコンディショニング
アキレス腱断裂はどうやって治すの?
治療法としては、手術療法と保存療法(手術をしない療法)の二つのアプローチが考えられます。アスリートは、再断裂のリスクが低いアキレス腱縫合術を選ぶ人が多いようです。一方、保存療法としては、ギプスでの固定やアキレス腱断裂専用の装具を使用する方法などがあります。
リハビリ|リコンディショニング
受傷した後のリハビリおよびリコンディショニングは、保存療法か手術療法によって、開始するタイミングが変わるため、医師や理学療法士(PT)のアドバイスに従って進めましょう。ここで紹介するのは競技に復帰するまでのトレーニングの一例ですが、アキレス腱断裂は再発しやすい傷害なので、慎重に取り組み、継続的なコンディショニングとアフターケアが必須です。
目安 | トレーニング | おすすめ | |
---|---|---|---|
ステップ1 | 固定期間中 |
|
|
ステップ2 | 簡易ギプス(ウォーカー)装着期間中 |
|
|
ステップ3 | 歩行が許された |
|
|
ステップ4 | 片足カーフレイズ(かかとを上げる動き)ができる |
|
|
ステップ5 | 片足でのその場ホップができる |
|
|
ステップ1 | |
---|---|
固定期間中 |
|
おすすめ |
|
ステップ2 |
簡易ギプス(ウォーカー)装着期間中 |
|
おすすめ |
|
ステップ3 |
歩行が許された |
|
おすすめ |
|
ステップ4 |
片足カーフレイズ(かかとを上げる動き)ができる |
|
おすすめ |
|
ステップ5 |
片足でのその場ホップができる |
|
おすすめ |
|
※)特にギプスを外した直後のはじめの2~3週間(上表のステップ2の時期)は、 再断裂のリスクが特に高いとされています。この期間は、リコンディショニングを非常に注意深く実施することが求められます。
まとめ
- 原因と発生頻度:
アキレス腱断裂は主にスポーツ活動中に発生し、30~50代のスポーツ愛好者の間で好発します。オーバーユースや加齢による腱の変性が主な原因として挙げられます。 - アキレス腱の構造と役割:
アキレス腱は腓腹筋とヒラメ筋があわさって形成されています。腓腹筋とヒラメ筋、アキレス腱は、つま先立ちやダッシュ、ジャンプ時に地面に力を伝える役割があります。 - アキレス腱断裂の症状:
断裂時には強烈な衝撃や特有の断裂音を感じることが多く、断裂部分には凹みが見られます。また、Thompsonテストという方法でアキレス腱の断裂を確認することができます。 - 治療法とリハビリテーション:
治療には手術療法と保存療法の二つのアプローチが存在します。リハビリテーションやトレーニングについては、再発予防に配慮し慎重に行いましょう。特にギプスを外した直後の初めての2~3週間は再発しやすいので注意が必要です。 - 復帰後はサポーターを利用して再発防止を:
アキレス腱や踵を安定させることで、アキレス腱への負担の軽減が期待出来ます。
参考文献
- 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』ZAMST
- 『対策HANDBOOK 足首ネンザ アキレス腱炎など 足の痛み』ZAMST
- 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
- Shamrock AG, Dreyer MA, Varacallo M. Achilles Tendon Rupture. [Updated 2023 Aug 13].
記事監修・ドクター紹介
毛利 晃大先生
順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員
日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター