スポーツによる脚のむくみと筋肉疲労
運動中に、あるいは長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの状況でふくらはぎがむくみ、脚の動きがにぶってしまうことはありませんか。スポーツであればパフォーマンスの低下にもつながってしまいます。この現象には脚の血液の流れが大きく影響しているようです。今回は特にふくらはぎを中心とした脚のむくみと筋肉疲労の原因、その解消方法について整理してみます。
ふくらはぎのポンプ活動
血液は動脈を通って体をめぐり、全身に酸素を届けたことによって酸素が少なくなった血液は、静脈を通って心臓に戻ります。脚をめぐった血液は重心に逆らって心臓に戻りますが、その際に大きなはたらきをするのが、ふくらはぎの筋肉です。ふくらはぎの筋肉がポンプのように収縮することで、血液を心臓に送り返す手助けをします。脚の静脈には、内側に弁がついていて重力による逆流を防ぐようになっていますが、筋肉の収縮がこれを助け、血液が滞るのを防いでいるのです。この働きのため、ふくらはぎを「第二の心臓」と呼ぶこともあります。
しかし、疲れたり同じ姿勢でいたりすると、この機能も低下します。血液が心臓に戻りにくくなり(脚に血液がたまりやすくなり)、脚がむくみ、だるくなることにつながります。
筋肉の収縮時:筋肉の収縮により弁は開き、血液を上方へと押し上げます。
筋肉の弛緩時:筋肉の弛緩(しかん)時には弁は閉じ、血液の逆流を防ぎます。
脚の筋肉疲労
激しい運動を繰り返していると、むくみなどの状態を超え、脚が上がらなくなる、動かなくなることもあります。筋肉は疲労が蓄積することで、収縮力が弱まります。これを筋肉疲労と呼びますが、筋肉疲労の原因はまだ完全に解明されているわけではありません。今のところ、エネルギー源が減少することに加え、乳酸などの代謝物質が蓄積されることが原因の一つとされています。筋肉の活動には酸素が不可欠ですが、疲労すると上述したポンプ活動などの活動も弱くなることから、ますます酸素の供給が追いつかなくなってしまうことが考えられます。
脚の疲労回復
疲労回復のためには、まず十分に休息をとること。それに加え、ストレッチや軽い有酸素運動、血液循環を促すアイシングをすることをおすすめします。さらに糖分やビタミンB1の接種も効果があると言われていますが、ここではアイシングとストレッチをご紹介します。
1. アイシング
激しい運動の後は軽いジョギングやストレッチを行い、その後10~15分程度のアイシングを行います。氷のう等を使い、心臓から遠いところからアイスマッサージを行います。アイシングをすることで血管が一時的に縮み、しばらくするとリバウンド効果で血管が拡張します。これにより血行が改善され、乳酸などの疲労物質の分解・吸収が促進されます。
また、アイシングはケガをした後のリハビリの際にも重要です。
なお、アイシングを行う際には、次のような体の反応に注意しましょう。
- 過敏症:寒冷刺激に対して過敏症のある場合にはアイシングは行わないようにします。過敏症とは、寒冷じんましんや血流低下によるチアノーゼ(皮膚が青紫色になる状態)などをいいます。
- 凍傷:アイシングの時間が長すぎると凍傷をおこす場合があります。また、氷や保冷材の表面に霜が付いているような場合は注意が必要です。表面が解けてから使用しましょう。
- 体温低下:広範囲や長時間のアイシングを行う際は体温の低下に注意します。
2. ストレッチ
運動後には、筋肉の疲労回復のために、必ず適度なストレッチを行いましょう。また運動前にも、ケガ予防のために実施しましょう。なお、ストレッチは反動をつけずにゆっくりと、筋肉を伸ばしていることを意識して行います。反動をつけてストレッチすると、元に戻ろうと対抗する力が発生し、十分なストレッチ効果が得られません。
ふくらはぎのストレッチ
- ①腕立てふせの姿勢から、両手を両足のつま先に近づけておしりを上げながら三角形を作ります。
- ②おしりが一番高くなった状態で左足を上げ、右足のかかとをゆっくり床に押し付けます。
- ③ふくらはぎが伸びていると感じたら、そのまま少し静止します。
- ④反対側も同じように行います。
- ①右足のつま先を、図のように段差に乗せ、息を吐きながら、かかとを下げます。
- ②ふくらはぎが伸びていると感じたら、そのまま少し静止します。
- ③反対側も同じように行います。
太もも(前面)のストレッチ
ふくらはぎの次は太もものストレッチも行いましょう。
- ①まっすぐ立って、右膝を折り曲げて、両手で右足の甲を持ちます。
- ②背すじを伸ばし、右足のかかとをおしりへ引き寄せます。
- ③反対側も同じように行います。
- ①床に横向きに寝転びます。
- ②左手は頭上に伸ばしておきます。
- ③右膝を折り曲げて、右手で右足の甲をつかみます。
- ④右足のかかとをおしりに引き寄せ、膝を後ろへ引きます。
- ⑤反対側も同じように行います。
太もも(後面)のストレッチ
- ①床に座り、左脚を伸ばします。
- ②右脚を曲げて、かかとを左の太ももにつけます。
- ③左脚を伸ばしたまま、息を吐きながら、左の太ももに近づくように上半身をたおします。
- ④太ももの裏側が伸びていると感じたら、そのまま少し静止します。この時、右脚が床から離れないようにします。
- ⑤反対側も同じように行います。
- ①あお向けに寝て、両膝を立てます。
- ②右膝を曲げたまま引き上げ、両手で足首の少し上をつかみます。
- ③右脚を胸のほうへゆっくりと引き寄せます。
- ④右膝を少しずつ伸ばし、太ももの裏側が伸びていると感じたら、そのまま少し静止します。
- ⑤反対側も同じように行います。
太もも(内側)のストレッチ
- ①イスに座り、やや広めに両脚を開きます。
- ②足は床につけ、つま先は外側に開きます。
- ③手を膝において息を吐きながら、背すじを伸ばして上半身を床のほうへたおします。
- ④手で膝を外側に押し、太ももの内側が伸びていると感じたら、そのまま少し静止します。
- ①右脚を前に出して、両足を60cmほど開いて立ちます。
- ②左足のつま先は、正面に対し外側に90゜開きます。
- ③右手を腰におき、息を吐きながら、右膝を曲げながら前方に出して、体重をかけていきます。
- ④左脚の太ももの内側が伸びていると感じたら、そのまま少し静止します。
- ⑤反対側も同じように行います。
参考文献
- 『対策HANDBOOK 効果的な疲労対策』ZAMST
- 『Sports Medicine Library』ZAMST
記事監修・整形外科医
- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター