TFCC損傷|手首の痛みを感じたら 原因・対処法・予防について
スポーツで足首捻挫が起きるように、手首にも捻挫があります。スポーツ中だけでなく、転倒して手をついた時や、仕事や日常生活でも手首の過度な使用によって起きる可能性があります。特に手首の捻挫で起きやすいのがTFCC(三角線維軟骨複合体)の損傷です。今回は、TFCC損傷の原因や実際の痛み、治療法や予防について解説します。
手首の仕組み
手首は8つの骨で形成される手根骨(シュコンコツ)と橈骨(トウコツ)と尺骨(シャッコツ)と、たくさんの筋肉や腱が集まってつくられています。筋肉や腱は、手首を動かす役割を持っています。
TFCC(三角線維軟骨複合体)は手首の小指側にある靱帯と軟骨の複合組織で、大きく2つの機能があります。一つは手をついたり、小指側へ傾けたりした際の衝撃を受け止める軟骨としての機能。もう一つは手のひらを下や上に向ける運動の際に、橈骨と尺骨を安定させる靱帯としての機能です。TFCCが損傷すると、これらの機能に障害が起きます。
TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷とは
TFCC損傷とは、手首に衝撃や捻りの力が加わって、TFCCの構造が損傷することです。転倒により手をつく、衝突、スポーツ中、交通事故などによって生じます。また、スポーツや仕事でのオーバーユース(使いすぎ)によって、1回の大きな外傷ではなく、繰り返しの外力によって損傷する場合もあります。
実際の症状と対処法
TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷の症状は? |チェックしたいこと
TFCC損傷の痛みは、損傷部位によって異なりますが、共通の症状として尺側(小指側)の痛みがあります。軟骨成分の損傷の場合は手首を小指側に傾けたときに誘発される痛みがあり、靱帯成分の損傷では手関節付近の橈骨と尺骨から構成される遠位橈尺関節が不安定になり、前腕の回外・回内の動きが制限されます。
TFCC損傷の疑いがある場合はどうしたらいいか?|セルフケア
受傷直後は、捻挫と同様にRICE (安静・冷却・圧迫・挙上)処置を行います。手首は足首と同様に日常生活でも良く動かす関節であるため、患部を安静にするためにサポーターやテーピングなどを積極的に用いて、患部をできるだけ動かさないようにしましょう。
症状の改善や緩和が見られない場合は手術など外科的処置が必要になる場合があります。医療機関のアドバイスに従いましょう。
TFCC損傷はどのくらいで治りますか?
TFCC損傷になった場合にどのくらいで治るか、いつ競技に復帰できるかは、症状の程度によります。症状が軽い場合は保存的治療(症状の改善や緩和を目指す治療)により24~48時間で改善しはじめます。手術が必要な場合、活動への復帰には平均で6週間前後かかるといわれており、ケースによっては3ヶ月以上かかる場合もあります。
予防とリコンディショニング
TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷からのリコンディショニングは医師の指示に従い、競技復帰に向けて段階的にトレーニングを行いましょう。
TFCC損傷のリハビリ|リコンディショニングは?
1)手首が動かせない段階
動画で紹介している「手のトレーニング」や軟式テニスボールなどを手の指で掴むトレーニングなどを行います。
2)手首の動きが可能になったら
リストカール、リバースリストカール、リストターンなど、チューブや軽いダンベルなどを用いて前腕の筋力を回復させていきます。
段階的なトレーニングを進める際には、手首を安定させるようなサポーターを用いると良いでしょう。また、トレーニング終了後はアイシングを行い、前腕部の筋肉のマッサージなども継続して行いましょう。
TFCC損傷の予防は?|ストレッチやサポーターについて
TFCC損傷の予防としては、以下が挙げられます。
- 手をついて身体を支える可能性の高いスポーツにおいては、手をつく方向、身体の支え方など正しい動きを段階的に習得することで、受傷のリスクを減らす。
- ラケットスポーツや器械体操など同じ動作を何度も繰り返す、手首に負担がかかるスポーツにおいては、ストレッチなどで日常の疲労の具合も把握しながら負荷をかける回数を確認し、オーバーユースにならないように注意する。サポーターやテーピングで手首を安定させることも負担の軽減につながります。
- 前腕・手首のストレッチや、前腕部にある筋肉をボールやフォームローラーなどを用いてマッサージするなど、疲労回復を積極的に行う。
前腕・手首のストレッチはこちら
まとめ
- TFCC(三角線維軟骨複合体)は手首の小指側にある靱帯と軟骨の複合組織で、衝撃を受け止める軟骨としての機能と、橈骨と尺骨を安定させる靱帯としての機能があります。
- TFCC損傷とは、手首に衝撃や捻りの力が加わって、TFCCの構造が損傷することです。
- TFCC損傷の痛みは、損傷部位によって異なりますが、共通の症状として尺側(小指側)の痛みがあります。
- 受賞直後はRICE(安静・冷却・圧迫・挙上)処置を行い、その後、サポーターやテーピングなどを用いて、患部をできるだけ動かさない様にしましょう。
- 前腕・手首のストレッチや、マッサージなど積極的に行い、疲労回復に努めましょう。
参考文献
- 『Sports Medicine Library』ZAMST
- 『対策HANDBOOK 肩・ヒジ・手首 指の痛み』ZAMST
- 『INSOLE GUIDEBOOK』ZAMST
- Melanson SW, Shuman VL. Acute Ankle Sprain. [Updated 2023 May 23].
- 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
記事監修・整形外科医
- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター
手の痛みについてより深く学びたい方へ
各痛みに関するドクターによる症状解説、トレーナーによる対処法解説がアーカイブ化されています。
※サポーターの使用によりこれらの症状に効果があるわけではありません。