変形性膝関節症とは|中高年のスポーツ愛好家に多い膝の痛み・症状と予防

変形性膝関節症は、中高年のスポーツ愛好家に多い、膝痛原因の代表的疾患です。膝の痛みの原因としてはもっとも多いともいわれています。50歳以降に多く、年齢とともに増加し、60歳以上では10%以上が患っているという研究報告もあります。いつまでもスポーツを楽しむためにも、関節炎の中でも一般的とされる変形性膝関節症について知っておきましょう。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう/へんけいせいしつかんせつしょう)とは、加齢による変化または膝の外傷後に、膝関節の軟骨が徐々にすり減って変形が起きる疾患です。肥満者のほうが膝への負担が大きく、軟骨も摩耗しやすいことから、発症には肥満との関係が深いと考えられています。加齢の場合、関節軟骨が加齢で弾力性を失うとともに、使いすぎによりすり減ることなどから関節が変形することで起こります。なお、日本はO脚傾向の人が多いので、膝の内側の軟骨がすり減る場合が多いとされています。

変形性膝関節症はどんな人に多い?
変形性膝関節症の発症は50歳以降に多く、年齢とともに増加します。過去に膝のケガをした人は、これより早めに発症する場合もあります。女性が多く、特に50歳以上の肥満女性は注意が必要です。また、中高年のスポーツ愛好家が増えていることから、膝への負担率が高くなり、変形性膝関節症の受診者は増加しているといわれています。
膝関節にかかる力
膝関節は、股関節とならび、人体で最大の関節の一つです。歩く、走る、ジャンプするといった動きにおいて中心的な役割を担います。激しい動きをする時には負担をうけやすく、ケガに悩まされやすい部分でもあります。通常の歩行中に膝関節にかかる力は、体重の2~3倍といわれています。また走行時には4倍から8倍程度の力がかかるとされています。さらに体重が1kg増えるごとに膝にかかる力は大幅に増加するのです。
変形性膝関節症とスポーツ
膝関節への負担が大きい特定のスポーツは変形性膝関節症へのリスクが高いのでしょうか? 一部のスポーツに関しては有病率が高かったという報告もありますが、スポーツへの参加と変形性膝関節症との関連性は完全には解明されていないようです。ただし、変形性膝関節症と診断され、運動時に膝の痛みを感じている場合には膝への負担が大きいスポーツ(サッカー、長距離走、ウェイトリフティング、レスリング、ラグビー、バスケットボール、バレーボール、バドミントン、柔道など)は控えたほうが良いでしょう。
変形性膝関節症の症状
初期症状:動作開始時の膝の痛み
立ち座りや歩きはじめなど、何らかの動きを開始する時に、膝の内側(親指側)のこわばりや痛みを感じます(動作時痛)。動作を続けるうちに痛みも和らぐので、放置されている場合も多いと考えられます。初期段階には無症状の場合もあります。
中期症状:膝の痛みの継続、膝に水が溜まり腫れる、熱感、可動域制限
動作はじめにだけ感じていた痛みが、動作が継続しても続くようになります。また膝関節の可動できる範囲が狭まり、曲げ伸ばしともに動かしにくくなります(可動域制限)。また滑膜炎により関節液が溜まる、いわゆる水が溜まる状態となり関節の腫れ(関節膨張)が見られます。
進行期症状(末期症状):歩行など日常生活への悪影響、O脚の進行
膝関節の隙間がなくなり、骨同士がぶつかる状態となるため痛みが悪化し、歩行や階段の上り下りが困難になります。進行が進むと、関節軟骨の摩耗がさらに進み、内反膝(O脚)が目立つようになります。

膝に水が溜まるとはどういうことか?
膝に水が溜まるというのは、上図のように滑膜炎により関節液が溜まった状態です。炎症が継続していると抜いても、再び溜まってきます。俗説に、膝の水を抜くとクセになるという話がありますが、これは単に炎症が継続しているからであり、クセになっているわけではありません。むしろ治療して炎症を抑えることが大事です。また関節液の状況を確認することも診断の上で必要なプロセスの一つなので、放置せず診察を受けましょう。
変形性膝関節症の治療とリコンディショニング
変形性膝関節症の治し方
はじめは症状改善、緩和を目指す保存療法が中心になります。
保存療法
- まずは運動量をセーブします。スポーツはもちろん、正座のような膝関節に負担がかかる動作も避けると良いでしょう。
- 食生活の見直しなど、日常生活の改善を行います。
- 痛みが強い場合には、医師と相談の上、薬物療法(鎮痛剤や関節内注射)など必要な治療を受けます。
- 太もも前面の筋肉の強化やストレッチングで関節の安定性を高めます。
- 膝の負担を和らげ、関節の安定性を改善するためにサポーターやインソールを利用した装具療法も保存療法の一つとして挙げられます。
手術療法
保存療法で改善が見られない場合、手術療法が選択されます。手術療法には大きく関節温存術と人工関節置換術があります。若年者やスポーツをされる人の場合、関節温存術を行うことが多く、高齢者は人工関節術が選択される傾向にあります(人工関節は耐用年数に限りがあり、可動域も限られるという欠点がありましたが、最近ではこうした欠点も解消されつつあります)。
関節温存術には初期に選択されやすい関節鏡視下手術(関節鏡視下デブリドマン)や中期に適した高位脛骨骨切り術といった方法があります。専門医に相談しましょう。
変形性膝関節症の予防とリコンディショニング
痛みがあると身体活動量が減り、その影響で筋力が低下するため、筋力による保護が不十分となり、膝への負担が大きくなることで、痛みがさらに強くなったりします。この悪循環を避けるため、痛みが強くならない範囲で太もも前面の筋肉の強化やストレッチングを⾏うことを心がけます。

膝のまわりの筋肉を強化する運動とストレッチング
太ももの筋肉(大腿四頭筋)の中でも膝のすぐ上にある筋肉は、膝への負担を減らすために特に大切な筋肉です。意識して鍛えようとしないと筋力が向上しない部位でもありますので、日常的に筋肉の強化を習慣づけ、併わせて膝の周りにある筋肉の動きをよくするストレッチングを行うと良いでしょう。
以下に、特別な器具を使用しなくても行えるトレーニングとストレッチングを動画でご紹介します。ただし、ひざに痛みがある場合は行わないでください。
大腿四頭筋のトレーニング
大腿四頭筋・腸腰筋のストレッチング
参考文献
- 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』ZAMST
- 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
- Hsu H, Siwiec RM. Knee Osteoarthritis. [Updated 2022 Sep 4].
- Driban JB, Hootman JM, Sitler MR, Harris KP, Cattano NM. Is Participation in Certain Sports Associated With Knee Osteoarthritis? A Systematic Review. J Athl Train. [2017 Jun 2;52(6):497-506. doi: 10.4085/1062-6050-50.2.08. ]
- Bestwick-Stevenson T, Ifesemen OS, Pearson RG, Edwards KL. Association of Sports Participation With Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Orthop J Sports Med. [2021 Jun 14;9(6):23259671211004554. doi: 10.1177/23259671211004554. ]
記事監修・整形外科医

- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター