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トップアスリートによるインソール・サポーターの使い方(サッカー編)|明治大学体育会サッカー部インタビュー

トップレベルの選手たちがサポーターやインソールをどのような目的で使用しているのかについては、一般的にはそれほど知られていません。ケガを防ぐためなのか、それともパフォーマンスを向上させるためなのか、具体的な利用シーンはどのようなものなのか。その利用実態を知るため、大学サッカー界をリードする名門、明治大学の中村草太選手(FW)、林晴己選手(MF)、そして新井康希トレーナーにお話をお伺いしました。

サッカー選手とインソール(中村選手の場合)

関東大学サッカーリーグ1部で得点、アシストともに1位(2023年10月取材時点)の中村草太選手

どういう目的でインソールを使い始めましたか?

中村選手:

自分は結構ネンザ癖があったので当初はパフォーマンス向上よりも、ケガの予防を目的に使用することを考えていました。インソールを使うようになって、高校の時と比べて足首のネンザなどが少なくなったと思います。かつて使用していたインソールは薄くて柔らかかったのですが、アーチ部分の厚さや固さの強度がプラスされたサッカー専用のインソールはサポート力に差を感じています。

スピードや球際の駆け引きに定評のある中村選手ですが、そのパフォーマンスを支えるという点でもメリットを感じますか?

中村選手:

スパイク内でのずれが少ないことから、切り返しの動きがしやすいと感じています。ずれるという感覚をなくすために、実はいろいろ試行錯誤をしていました。今は、機能性ソックスとインソールを組み合わせることで、そのずれる感覚が大幅に軽減されました。

踏ん張る瞬間に足とスパイクがずれないこと、そして力をしっかりと加えられるようになった点で、僕のプレースタイルと相性が良いと感じています。具体的に言うと、大事な場面での一歩目や、力をしっかりと加えたい一瞬のタイミングで力を最大限に発揮しやすいと感じています。

中村選手は、練習用、試合用それぞれのシューズにインソールを入れている。交換頻度は1年に1回くらいとのこと。

ケガの防止という観点で、どういうことを意識してプレーしていますか?

中村選手:

インソールやサポーターなどを活用していくことももちろんですが、練習後の交代浴や、夜のストレッチ、水分摂取の方法など、自分自身で行えるケアも積極的に取り組み、少しでもケガの予防をしてパフォーマンスにつなげることにを意識しています。

特に大学1年生の時は、身体がまだ明治大学サッカー部の練習強度に慣れていなくて、ケガをしやすい時期でした。その際、先輩たちが行っているケアを率先して取り入れるようにしました。高校と比べて大学のレベルは格段に高く、別世界に来たような感覚でした。そのため、練習の厳しさを経験する中で、自分の身体は自分で守る必要があると痛感しました。

また、周囲の選手たちが日常的に行っている身体ケアを目の当たりにすることで、自分にとっても自然と当たり前の習慣として意識できるようになってきた点はすごくありがたい環境だと思います。

サッカー選手とサポーター(林選手の場合)

林選手がサポーターを使い始めたきっかけを教えてください。

林選手:

高校と大学で足首をケガした経験があり、その回復や予防のためにサポーターを使い始めました。自分はテーピングが嫌いだったのでトレーナーに相談したら「FILMISTA ANKLE」を薦められて使ったのが最初です。薄くて、すぐ着けられる感じが気に入って、主に足首をケガした際に使っています。

林選手が使っていたのは「フィルム」のように薄く、「安定感」をもたらす新世代サポーター「FILMISTA ANKLE」。ウレタンフィルムがテーピング理論に基づいて最適配置され、内反の動きを抑制。

テーピングと「FILMISTA ANKLE」のようなサポーターとの違いはどこにありますか?

林選手:

テーピングはかさばってしまうことが多く、また固定が強すぎると動きに制限が出すぎます。また練習や試合中にずれたりすることも気になります。着けるのに時間がかかる点も不便です。

一方、「FILMISTA ANKLE」は主に練習で使用していましたが、違和感はほとんどないです。サッカー中は着けている感覚もあまりなく、必要な部分への適度な固定がされていますが、過度ではありません。何よりも、ボールにタッチする際の感覚もほとんど変わらない印象です。ケガをしている時は、サポーターの方が自分にあっていると思います。

身体のケアなどの側面で、明治に入ってから意識は変わりましたか?

林選手:

大学に入ってからは、ストレッチの時間が格段に増え、食事にも一層意識を向けるようになりました。特に、先輩たちが体調管理に注力している環境があったため、自ずとその重要性に気づき、自分自身がどういう存在になりたいのかを考え、必要な身体ケアに取り組むようになりました。

例えば、お風呂上がりには、特に硬くなりがちな部分に時間を費やしてしっかりとケアをしています。その手法は、トレーナーやコーチからのアドバイスを基にしています。特に足首を痛めやすかった問題に対しても、足の裏から始めるケア方法を採用しています。

こうしたことはプレーで自分を最大限表現していくために継続していくべきだと思っています。チームに欠かせない存在になるには、まだまだプレーに波があるので安定させていかなければならない。身体が重かったりすると、コンディションにも影響しますし、ミスにもつながります。今の自分には安定こそが課題なので、その一つの側面として身体に向き合うことも大事にしています。

大学サッカーにおける自分の身体との向き合い方

林晴己選手(左)新井康希トレーナー(中)中村草太選手(右)

朝練から見ていましたが、朝からハイプレッシャーな練習でしたね。ハードな練習をしているからこそ、ケガのリスクもそれなりにあると思いますが、どのあたりに注意されていますか?

新井康希トレーナー:

朝の練習はフルコートやハーフコートと多様ですが、基本的には最後に試合形式で練習を締めくくっています。フィジカルコーチはウォームアップから練習までの間で行うべきストレッチなどの要素を取り入れるほか、選手個別の対応もしています。監督からは「今日はこのような練習になるので、このようなアップをしよう」という具体的な指示が出されることもあります。

選手への個別対応では、ストレッチの方法などのアドバイスはもちろん、食べ物や飲み物のアドバイスも含みます。ただし、選手が先輩から聞いて「自分で考えて」実践していくということが明治本来のスタイルです。

トレーナーさんと選手のコミュニケーションは主にどの場面が多いですか?

新井康希トレーナー:

コミュニケーションする機会が多いのはリハビリなどで活用するケアルームですね。リハビリ中の選手や動けない選手はケアルームで治療をして、その後にグラウンドに出てきてリハビリをするという流れになります。また、練習が始まる前後でもグラウンドでのケアがあり、体調が不安定な選手やリハビリから復帰した選手には特に声を掛けています。

例えば、朝の練習前には基本的にテーピングを施したり、ケガをしている選手には参加できるかどうかの判断を下したりもしています。練習前に行う補強のアドバイスも、ケアルームで行うことが多いです。

リコンディショニングの段階では復帰のためのメニューを提示しています。「これができるようになったから、そろそろジョギングを開始しようか」というように会話をしながら、段階的にプログラムを組みます。今は3人体制でサポートしているので、そのあたりは手厚い環境かもしれませんね。

リコンディショニングの際、選手の中には早く復帰したいがために無理をする人もいると思いますが、そのあたりはどう見極めていますか?

新井康希トレーナー:

痛みの評価や筋力的な評価などを加味して「このレベルだとこの範囲で動ける」といった指摘や、「このペースで行くと再度離脱する可能性がある」というアドバイスを行っています。みんなギリギリのところを攻めているので、難しい判断もしばしばあります。

さらに、可動域や痛みの状態をチェックし、「この段階なら走れる」「ステップを開始できる」「ジャンプが可能だ」といった評価をしています。選手によって痛みの耐性が異なるため、客観的な評価だけでなく選手自身の主観的な評価も重視しています。また、監督やコーチともコミュニケーションを取り、総合的な判断を下しています。

1年生は特に練習の質も変わりますし、自分と向き合って考える力も未熟だったりするので、負担を感じやすいと言えるでしょう。監督も自分で考える力をすごく大事にしている方なので、それを1年生の段階で、実践できるように伝えていくのもトレーナーの役割だと思っています。

サッカーでトップを志す学生たちに自分の身体との向き合い方でアドバイスできることなどはありますか?

新井康希トレーナー:

明治は確かに身体のケアという側面では手厚いかもしれませんが、だからといって選手が受動的にならないように心がけています。何よりもセルフケアを一番大事にしています。自分で考えながら自分の身体と向き合っていくことが、トレーナーがいようがいまいが、自分で考え自分の身体に誠実に向き合うことが大切だと信じています。外部からの情報を取り入れること、指導者や先輩の教えも確かに重要ですが、それらを通じて自分自身の考えを形成することが最も価値のある点だと考えています。