足部アライメントと膝の痛みの関係
走る、跳ぶなどのくり返し動作により膝のスポーツ障害が発生した場合や変形性膝関節症になった場合、膝の負担を和らげるためにインソールを勧められることがあります。膝が痛いのに、その負担を和らげるのになぜ足元をケアするのでしょうか? それには足部アライメントが関係します。
アライメントとは
アライメント(alignment)とは一列に配列することを意味します。下肢アライメントとは大腿骨頭中心と足関節中心を結んだ線のことを指します。また足部アライメントと呼ぶ場合は下腿とくるぶし、足の位置関係のことになります。ここでは主に足部アライメントについてとりあげます。
アライメントがズレるとどうなる?
体全体を支える土台である足部アライメントが崩れると、足首、膝、さらには背中や首まで連なる全体のバランスに影響を及ぼすといわれています。例えば歩行や走行時の筋肉や関節の痛みの原因となる場合があります。
以下の人体モデルを見てみましょう。例えば足のアーチ(土踏まず)の低下により足が内側に傾くと足首やすね、膝が内側に回転します。また、さらにバランスが悪くなると股関節が内側に回転し、やがてその上の腰や胸・背中、首や肩にまで影響を与えることがわかります。
足部アライメントの異常とは
足のアーチ 崩れるとどうなる?
足部アライメントは足部の傾きで大きく3つのタイプに分類できます。このうちオーバープロネーションとスピネーションが、足部アライメントに異常がある状態です。
直立し、足に体重をかけた時に下腿と足を縦線で結ぶと、まっすぐになる状態。
直立し、足に体重をかけた時に下腿と足を縦線で結ぶと、内くるぶしが過剰に内側に倒れ込む状態。接地時の衝撃吸収が不十分になります。 扁平足などで土踏まずが低下・消失するとなりやすくなります。
直立し、足に体重をかけた時に下腿と足を縦線で結ぶと、外くるぶしが過剰に外側に倒れ込む状態。接地時の衝撃が足底の外側の狭い部分に集中しています。
膝の痛みとアライメントの関係
前述のように、アライメントの異常は全身に影響を与えますが、その一つの例として今回はスポーツにおける膝の痛みとの関係を考えてみましょう。
スポーツにおける膝の痛みの原因となるケガには、外から強い力が加わることによって発生するスポーツ外傷と、走る、跳ぶなどの動作をくり返し行うことで骨、腱、筋肉などが疲労して起こるスポーツ障害があります。足部アライメントの異常と関わるのはスポーツ障害です。膝のスポーツ障害としてはいわゆるランナー膝、ジャンパー膝、オスグッド・シュラッター病などがあります。
足部アライメントに異常があると、足部の衝撃吸収が不十分になります。そして、膝にも余計に負荷がかかることになります。このことから、足部アライメントが膝のスポーツ障害には少なからず影響を与えると考えられています。 例えばランナー膝の場合、過剰なランニング練習、柔軟性不足(ウォームアップ不足)、休養不足、硬い路面や下り坂、硬いシューズなどさまざまな要因があわさって発症しますが、アライメントが崩れること(膝が内側に回転する内反膝)もその一因とされています。
膝の痛みとインソール
そのため、オーバーユースが原因となる膝のスポーツ障害の予防やケガからのリコンディショニングの段階で、足部アライメントのバランスを整えるという観点からインソールの使用を勧められることがあります。
インソールでケガは治るのか?
インソールでケガが治るわけではありません。インソールで、正常な足部アライメントの実現をサポートすることで膝への衝撃負担を和らげ、回復の助けとなるようにします。
インソールは、正常な足部アライメントへどう導くのか?
Point
踵を安定させる
深いヒールカップを持ったスポーツインソール(機能性インソール)であれば、踵のグラつきを抑え、安定させる働きが期待できます。
Point
足のアーチを強固にする
足のアーチをサポートする機能のついたスポーツインソール(機能性インソール)は足のアーチを強固にし、アーチ本来が持つ衝撃を吸収するはたらきと、体重移動を円滑にするはたらきを助けます。
まとめ
- 足部アライメントは下腿とくるぶし、足の位置関係のことを指します。
- 足部アライメントが崩れると、足首、膝、さらには背中や首まで連なる全体のバランスに影響を及ぼすといわれています。
- 足部アライメントに異常があると、足部の衝撃吸収が不十分になり、膝にも余計に負荷がかかることになります。その結果、膝のスポーツ障害にも影響を与えると考えられます。
- 膝のスポーツ障害の予防やリコンディショニングの段階で、足部アライメントのバランスを整えるという観点から、インソールの使用を勧められることがあります。
- スポーツインソールには踵を安定させる機能と足のアーチを強固にする機能があります。
参考文献
- 『INSOLE GUIDEBOOK』ZAMST
- https://www.custombalance.jp/about/ 日本シグマックス
- 『対策HANDBOOK 膝の痛み』ZAMST
- 『SPORTS MEDICINE LIBRARY』ZAMST
- 医療情報科学研究所 『病気がみえるvol.11 運動器・整形外科』メディックメディア
記事監修・整形外科医
- 毛利 晃大先生
- 順天堂大学医学部卒業、日本救急医学会専門医、日本整形外科学会会員 日本医師会認定スポーツ医、日本バスケットボール協会スポーツ医学委員会所属ドクター